緋女 ~前編~
知らない部屋、その男。
温かい光が私を包みこむような感覚。
だが、それは私に起きろと告げている。
なんて残酷な心地良さなんだろう。
この光を浴びなければ、ずっと傷つかなくて済むのに。
でもいつか誰かが言ったように時間だけは平等に流れる。
楽しい時間は長くならないし、苦しい時間はなくならない。
___私が大嫌いな朝も。
いつもはこの光の感覚に仕方なく起きるのだが、今日は布団を引いてベットの心地良さに身を任せ、もう一度眠りにつこうと、そうなぜか思った___。
いつもよりもなぜか無性に起きたくなかった。
いや、むしろ起きてしまったらいけないような気がどこかでしていた。
布団を引っ張り頭まで布団をかぶろうとする。まるで光を遮りたいような、そんな感じで。
だがそれはかなわなかった。
もう一度布団を引っ張る。
むっ。
むむむむむっ⁉
………布団が重たい。
いくら引っ張っても動かない。
さっきまでの心地良さは吹き飛んで、不快感が襲う。
私はしぶしぶ起き上がった。あくびをしつつ、のびてみる。それから目をこする。
あぁ、いつもの朝の始まりだ。