緋女 ~前編~
「ちょっ、手伝わなくていいっ。いいからっ」
「遠慮なさらず、わたくしはレヴィア様の世話役ですから」
「それは世話じゃないわ。セクハラよっ」
やはりここで第二の人生を過ごすことを決めたのは時期早々だったかもしれない。
やはり、新手の詐欺師であり変態な奴に拾われただけなのではないか?
顔がいいだけに残念すぎるその正体に、窓があってこれ以上は下がることができない私。
「待って、お願い」
「いえ、待ちません」
楽しむかのようなゆっくりした足取りの彼に何を言ったら止まってくれるのか、答えの出ない問いを自分に投げかけた。
「わっ私の執事なら私の命令聞きなさいっ」
「わたくしは執事ではなく、お世話役兼教育係ですよ」
「どっちも同じじゃないっ」
「同じなんかじゃありませんよ。よろしければ着替えの間にお話しましょう」
「着替えの時は出てって!」
あと三歩になった時、彼が無表情のまま言った。
「そばを離れない命令を受けていますので」
でも私には分かる。
彼の瞳が完全に楽しんでいるだけだと言っている___。