緋女 ~前編~
『入りなさい』
その声は歳が窺えるような重みがあった。
「失礼します」
彼がドアを引いて私に頭を下げる。
「どうぞ」
先に入ることになった私は、真正面の書類で山積みになっている机の向こうに座る男と一対一で向かい合った。
その男は金色の髪とゴールドアイの持ち主で、四十代前後に見えた。
パタン___
後ろでドアの閉まる音。
それと同時に背後に彼を感じる。
それから長いこと見つめ合っていた気がした。
そらしたら終わり。
なぜかそんな感じがしたから、私は耐える。
やがて、国王は重々しく口を開いた。
「余はこの国シェイド・クラウンの王であり、シェイクラキャッスルの王である」
なんと言えばいいか分からずに、とりあえずその言葉に低頭する。
「___君がシュティ・レヴィアだね」
厳かに私へふってきたその声に、返答が困った。
そのときふと思い出す。
“貴女は正直に話していただくだけで結構です”
ついさっきの彼の言葉に私は心を決めた___。
「私はシュティ・レヴィアではありません」
後ろで彼が抑えきれない笑みを必死で殺しているとも知らずに。