緋女 ~前編~

彼の言葉にムカついたものの好奇心の方が勝った私は、さっそく路地から出ようとする。

「待ってください」

彼がそれをひき止めた。私が振り返ろうとするがそれも阻まれる。

後ろからふわりと何かかぶせられる。

「えっ、なにこれ」

この何か分からないものに戸惑う私にケイが答えた。

「私が普段使っているローブです。顔が隠れるようにかぶっていただけますか」

「なっ、なんで?」

「___貴女は目立つので」

なるほど、確かにこんな髪と瞳だったらそれは目立つ。

彼の言葉に納得して、うなずく。深くローブのフードを深くかぶると、彼の匂い。

なぜか懐かしい気持ちになった___。

はねるように私は彼と共に街へと飛び出した。その様子に彼の口の端が僅かにつり上がったのは誰も知らない。





なにこれ………?

城下町の出店には色々なものがあった。それこそ私が全く見たことのないものまであって、正直いつまででも見て回れる。

何を食べようか決めかねる。

ケイがさっさと魔法で何か作るよりも絶対時間がかかっていることに気がついたのは、その時だった。

「あっ、ごめん。時間ないんだよね」

「………大丈夫です」

「えっでも………ごめん、急ぐね」

「大丈夫ですから」

その言葉に嘘言っているのではと彼の瞳を窺うが、彼の瞳に嘘はなくて首をかしげる。

じゃあ、時間がない方が嘘?

なんで___?

「ねぇ、ケイ」

彼のゴールドアイに私が映る。



「城下町、案内してくれるの?」



朝が早かったのって、そういうこと?


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