僕らはきっと、あの光差す場所へ


「じゃあ、なんで捜すなんて、」

「何もしないで手放すのと、何かして手放すのは違う。わたしは、隼人を捜したい。ねえ、お願い。今日一日でいいよ。私と隼人を捜してほしい……」



懇願するような瞳を向けて、橘は勢いよく僕なんかに頭を下げた。ポニーテールに縛った彼女の綺麗な黒髪がばさりと前に垂れ下がる。



「やめろよ、」

「お願い……」



 正直、自分が誰かに頭を下げられるほどの人間じゃないとわかっているから、素直にうなずくのは難しかった。


 僕は確かに周りをよく見ている。でもそれは、単なる自己防衛にすぎないことだ。人の動向をいつも窺っているし、誰かの視線をいつも気にしているのは、自分を見られることが怖いからだ。

そんな僕が、まるで太陽みたいな存在の橘千歳と、クラスの中心に位置していた唐沢隼人を捜すなんて、そんなことできるのだろうか。


抜け落ちてしまったような感情は自分でも上手くコントロールすることができない。僕なんかに頭を下げる橘を見て、つい、言葉が口からポロリとこぼれおちてしまった。



「……何もできないかもしれないよ、それでもいいのか」



 僕の言葉に、橘は勢いよく顔をあげた。その瞳はさっきとは違う意味で潤っている。



「もちろんっ! ありがとう春瀬っ……!」



 そう言った橘の笑顔は可憐な百合の花というよりは太陽によく似合う向日葵のようで、唐沢隼人と橘が恋に落ちたのはやはり必然のようなものだったんだろう。そう思った瞬間、僕の心臓がドクリと嫌な音を立てた。


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