僕らはきっと、あの光差す場所へ



「春瀬は、行きたいところある?」

「行きたいところっていうか……唐沢が行きそうなところ、橘のがよくわかってるだろ」

「隼人が行きそうなところ、かあ……」



 走る自転車に逆らった風によって前髪がさらわれそうになる。僕は片手でそれを押さえて、顔を少し下へと傾けた。



「どっかあるだろ、ていうか、捜しに行きたいだなんていうなら最初から考えとけよ。当てもない旅とか絶対に嫌だから」

「うん、そうだよねえ……」



 僕の言葉の意味をわかっているのかわかっていないのか、橘は曖昧な返事しかしない。左手で前髪を押さえたせいで、右手だけで支えられたハンドルは次第にバランスを失っていく。またゆらゆらと揺れる自転車に気づいたのか、橘が後ろで声をあげた。



「ちょっと、なんで片手運転してるのよー」

「いいだろ別に、なんだって」

「よくない! ただでさえ運転ヘタなんだから。また転んだらどうするの!」



確かにそれはそうだけれど、こっちは必死に漕いでやってるっていうのになんて薄情な奴だろう。第一、僕は唐沢隼人を捜そうだなんて馬鹿げた話に賛成したわけじゃないっていうのに。



「ていうか、どこに行くかいい加減決めろよ。このまま自転車走らせてるだけじゃ何も意味がないだろ」

「……」



 黙り込んだ橘の息遣いはすぐ後ろで聞こえている。スピードを落としたおかげで風に髪が揺られなくなったので、僕は再び両手でハンドルを握った。重心をしっかりと捉えながら慎重に進んでいく。橘の答えは、ない。




「橘」

「……」

「お前今、何を考えてる?」


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