僕らはきっと、あの光差す場所へ
「そんなに長くて、ジャマじゃないの?」
「別に、運動とかしないし」
「もしかして、体育やらないのも前髪が理由?」
「別に、それだけじゃないけど、まあそれもあるよ」
「うわ、なにそれ、優等生クンは違うなー」
顔を見られたくないなんて、橘のような人間にはわかりやしないだろう。体育の授業に出なくていいっていう特別待遇を受けているのは、自分の成績がいいからだってわかってはいるけれど。
目の前を歩く橘のポニーテールはゆらゆらと風にさらわれる葉のように揺れている。そこまで広くない敷地内。社殿はあと少しだ。
「まあ、勉強くらいしかやることないしな」
「友達いないもんね」
「……橘、おまえ絶対嫌われるタイプだろ」
「春瀬よりは好かれてると思うけどー?」
「……」
そんなこと言われなくてもわかってるっていうのに、いちいち言ってくるあたり橘はやっぱり僕よりよっぽどデリカシーというものを持ち合わせていない。
「ねえ、おさい銭ちょうだい」
「はあ?」
「はあ? じゃなくて、おさい銭! お参り?するでしょ?」
「……」
そして、極度のワガママだ。荷物を持たずに来たとはいえ、こんなにも遠慮のない奴が他にいるだろうか。僕と橘が関わったのはほぼ今日が初めてだっていうのに。