僕らはきっと、あの光差す場所へ


 自分の手に汗が浮かんだのを感じる。

オレンジとバナナの差、か。橘が再びサンドイッチを頬張るのを眺めながら、なんとなく、本当になんとなく、唐沢の姿をそこに重ねた。

 一線を引いた向こう側、いたのはいつも橘だったってわけだ。まあそりゃあ、付き合っていたんだし、誰もが認めるほどお互いを必要としていることは、何の関係もなかった僕にだって痛いほどわかっていた。……痛いほど。

 クラスメイト達は、彼らの周りにいた奴らは、教師たちは、それに気づいていただろうか。唐沢がどこか一線を引いていたことを知っていただろうか。本当に心を開いてなんて、決して一番奥深くには触れさせてもらえていないことを、わかっていたのだろうか。



「……おいしい」



 ナポリタンを頬張りながらポツリと吐いた言葉に橘が顔をあげて、笑う。それは多分、癖になったそれとは違うんだろうと思った。


「でしょ。春瀬、案外わかる奴じゃん」

「さっきは味覚が絶対合わないって言ってたのにな」

「わたしさあ、トマトは嫌いだけどケチャップは食べれるの」

「いや、聞いてないけど」

「聞いてよ! ミサもユウカもすっごいバカにするんだから」

「ケチャップだけ食べれる奴って案外いると思うけど」

「ねえ、ほら、そうでしょ? そう思うでしょ?」


ミサとユウカ。橘がいつも一緒にいるクラスメイトの名前だ。

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