僕らはきっと、あの光差す場所へ
PM 13:42 眠気
———午後1時43分。
腕時計の長針は9を少し過ぎたところを指していた。だいたいそのくらいの時間だろう。
二時間近くも滞在してしまったことをお会計の時に謝ったのだけれど、ヒロさんは僕の言葉を笑い飛ばした。
『何言ってるの。お客さんがいてくれた方がわたしもうれしいのよ。春瀬くん、だったかしら? ……またいつでも来て頂戴ね。バナナジュース、またサービスでつけるわ』
って、そう言って。
僕はその言葉に何度も頭を下げて、橘はそんな僕を見て笑った。『またこいつ連れて来るよ、ヒロさん』なんて余計なことを言うから、僕は思わず反論しそうになってしまったんだけれど、そこはなんとかこらえることが出来た。
店を出て、停めてあった自転車にまたがると、当たり前のように橘が荷台へと飛び乗る。僕も何故かそれを当たり前みたいに受け入れてしまって、なんだか悔しい。
大方慣れたふたり乗り。後ろの橘はもう何も文句を言わなくなった。ただ、まだ慎重ではあるけれど。自然に僕の腰に回される橘の手のひらは思ったよりも冷たくて、外の気温に似つかないなあと思う。そんな風にすんなりと受け入れてしまっていること自体が、やっぱりおかしい。