僕らはきっと、あの光差す場所へ
「それで、次はどこ行くんだよ」
「わたしが決めてると思う?」
「思わない」
「せいかーい」
すでに進みだした自転車を止めることはできず、後ろの橘にあきれながらもとりあえず足を動かした。
住宅街を抜けて大通りに出る。田んぼに囲まれた全面緑色のこの町は、まるで小さい頃飼っていたカブトムシの虫籠のように思う。
店内はクーラーが効いていたから忘れかけていたけれど、自転車を漕ぎだして一瞬で全身に汗をかいた。朝よりも突き刺さる太陽光と上昇したであろう気温は僕らの肌をじりじりと焼き付けるようで、真夏の昼間に外になんて出るもんじゃないと確信する。痛いほどの、真夏。
「はるせえ」
「なんだよ、暑い、近寄るな」
「うわ、機嫌悪っ! わたしだって暑いんだからーね」
こんな炎天下の中当てもなく自転車を漕ぐのはまっぴらごめんだ。
「唐沢のこと本当に捜してんのかよ」
「口調荒いよーヒカルクン」
「……その名前呼ぶなっつったのに」
「もー、そんなに怒らないでよ」
「で、どこ行く。暑いんだけど」
「……どこかなあ……」
「橘さあ……」
『本当は唐沢のことなんて、一ミリだって捜そうとしてないんじゃないの』と。喉まで出かかった言葉をグッとこらえる。
……なんとなく、わかってはいるんだ。
捜すなんてこと、ただの建前だってこと。だって橘は、唐沢を捜しに行こうだなんて僕を連れ出したけれど、一斉そんな素振りを見せやしない。それどころか、恋人がいなくなったっていうのに馬鹿みたいに元気で、いつも通り。……多少の違和感は最初から感じていたけれど、かれこれ五時間近く一緒にいるうちに、その違和感は段々と膨らんで大きくなってきている。