僕らはきっと、あの光差す場所へ
「……唐沢とよく行った場所とかないの」
「よく行った場所?」
「あるだろ、普通。……付き合ってたんだから」
「……そうだねえ……」
平日の昼間に車の通りは少ない。住宅街を抜けてしまえば大通りと言っても田んぼと畑ばかりで、トラックが一二台僕らを追い越していったくらいだ。試しに空を見上げてみると想像以上に真っ青な海が広がっていて、橘が好きだと言ったソーダ味のアイスが食べたいな、と思う。
「……離れたところに、小屋があるんだけど」
「小屋?」
「うん。古い、廃墟なのかな。カンタンに入れる、小屋みたいなとこがある。……よく行ってたな、隼人と。……誰にも見つからないから、あそこは」
後ろから聞こえた声が、いつものそれとは大分違い、落ち着いたものだったから。彼女を後ろに乗せているせいで見えない表情のことを思い浮かべても、橘の笑った顔しか浮かばない自分を情けなくとも、アホらしいとも思った。