僕らはきっと、あの光差す場所へ


「……隣の部屋は何があるの」

「なんにもないよ。しいて言うならベットくらい」

「へえ……」


暑い夏の日。扉を開ければ熱気が一気に外へ飛び出て行った。蒸し暑さは否めないけれど、太陽の下自転車を漕いでいるよりは全然いい。


ふた部屋しかないこの小屋で、唐沢と橘が何をしていたのかなんて僕には関係のない話だ。

どうしてこんな町はずれの、しかも学校とは正反対に位置するこの場所を見つけることが出来たのか。どうしてよくこんな所へ来ていたのか。ここで、ふたりで、何をしていたのか。

関係ない。興味なんてない。知りたいだなんて思っていない。

でも、おかしいじゃないか。橘と唐沢。世界はまるでこのふたりのために動いていると言っても過言じゃないくらいのトップ層。クラス内ピラミッドの真頂点。そんなふたりなら、どこにいたって、何をしていたって、当たり前のように受け入れられるはずじゃないか。

わざわざこんな遠いところまで自転車を走らせて、隠れ家をつくった? 何のために? ———ふたりきりになりたいなんていう単純な答えなら、もっといい場所が他にあったはずだ。



「どうやって見つけたの、こんなとこ」

「……隣の市に行こうとしたとき、たまたまふたりで通りかかってねー」

「自転車で? わざわざ? バスも電車も使わずに?」

「そうだよ。去年の夏休み。今日と同じくらい暑かったなあ、あの日。ふたりで海を目指してね。ほら、隣の市を越えると海があるでしょ」

「……それからずっとここに入り浸って?」

「入り浸るって言い方なんかヤダなー」

「ていうか、こんな林の中、外を通りかかっただけじゃこの小屋があるかどうかなんてわからないだろ」

「……なにそれ、もしかして春瀬、私のこと疑ってるの?」


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