僕らはきっと、あの光差す場所へ
ギクリ、と肩が震えた。
疑っている、ってなにを。僕が、唐沢が消えたのが橘のせいだと疑ってるということだろうか。疑ってるって、どうして。唐沢が消えたのがただの家出や失踪じゃないかもしれないって、橘は思っているから、そんな思考に陥るんじゃないのか? だとしたら、橘は本当は何かを知っているんじゃないのか———。
「もう、黙り込まないでよ。せっかく春瀬と仲良くなれたと思ったんだけどなあ」
「なあ、橘、」
「春瀬は、隼人がこの町へやってきたときのこと覚えてる?」
橘の表情がするりと移り変わった。ひどく新妙な面持ちをした橘は僕の方を目線だけで追って、右手でひとり分あいたソファをぽんぽんと叩く。そこへ座れということだろう。
「……去年の、春?」
立ち尽くしたまま答えると、橘はそのまま目線を下げて「そう」とつぶやいた。僕は制服のズボンを無意識に握りしめる。
去年の春。高校一年の、春。
新しい制服、新しい環境、でも見慣れたクラスメイト達。中学生だったころの僕らはあたりまえに町にひとつしかない高校への進学を選んだ。特別頭のいい奴と頭の悪い奴を除いた八割は。
他中学からやってくる奴らもいたけれど、おなじ町内、部活動やクラブ活動、塾や交流会で同学年の人間はなんとなく顔を知っている奴が多かった。もちろん、中3の時にここへ越してきた僕は半分以上知らない他人だったけれど。