僕らはきっと、あの光差す場所へ
「捜すって言ったって、唐沢の行き先か何か、知ってるの?」
「……」
橘は眉間にしわを寄せて黙り込んだ。やっぱり考えなしの発言か。
ゆっくりと階段を降り切って、橘の目の前へと立つ。女子の中では高身長だと思っていたけれど、こうして見るとそうでもないことがわかる。175センチの僕よりも10数センチは小さい彼女を見下ろして、唐沢といる時もこれくらいの身長差があったな、と思い出す。
「橘、気持ちはわかるけどちょっと落ち着いた方がいい。だいたい、あいつは橘に黙って消えるような奴じゃないだろ? もしあいつが本当に探して欲しいと思ってるのなら、今頃1番に橘に連絡をよこしてる筈だよ。それがないってことは、探すなってことじゃないの」
「……」
橘はじっとこちらを見つめている。いや、見つめているというよりも睨んでいるのだろう。彼女の大きな黒目がだんだんと潤んでくるのを感じて、彼女は彼女なりに不安と戦っているのだろうな、と思う。
まあそれにしたって、僕には何の関係もない話なんだけれど。
「……お願い、手伝ってよ」
「……だから、橘…」
「隼人は消えたんだよ! わたしが隼人を探してあげなきゃ、誰が捜すっていうの……?」