僕らはきっと、あの光差す場所へ


 橘の瞳の中がゆらゆらと揺れている。その瞳の焦点は合っているようできっと合っていない。



「……探すのは橘の役目じゃないと思う」

「……じゃあ、黙って待ってろっていうの?」



 黙って待っていろ、と。そう答えるのが最善なのだろうか。

少なくとも、今目の前にいる橘は正気じゃない。恋人が突然いなくなったのだから当たり前と言えばそうなのかもしれないけれど、何故クラスの他の誰でもなく〝僕〟なのか、そこが一番腑に落ちない。

だって、僕と橘千歳や唐沢隼人は、まるで正反対に位置する人種じゃないか。


———唐沢 隼人 という人間が消えた。


 それは、僕らの日常を変えるには十分すぎるほどの出来事だった。唐沢隼人という人間は、所謂クラスをまとめるリーダー的存在であり、いつもクラスの中心にいるような奴だった。いつも教室の端でクラスメイトを見ているだけの僕とは正反対に、常に笑顔をふりまいていた彼は、周りを明るく照らす太陽みたいな存在だった。


 そんな彼と、クラスの女子の中心にいた橘千歳が恋に堕ちたのは殆ど必然のようなものだっただろう。

誰もが唐沢と橘の関係に憧れていたし、誰もが2人のことを認めていた。そしてきっと、お互いがお互いを本当に大切に想っていた。見ているだけのこちらにでも、わかるくらいに。

それだから———唐沢が消える必要など、どこにもなかったのだ。そう、どこにも。



「……橘は、どう思う」

「……え?」

「唐沢は、自分から消えたと思うか?」

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