白い狐は出会いの季節
「寒河江さん、送ったデータからなにか分かりましたか?」
「えぇ、前にとった声紋と完全に一致したわ。
さすがに録音だけだと場所はすぐに割れなかったけど、『曇天』のメンバーのアカウントが使われている情報媒体をハッキングして、GPSの履歴を調べればすぐ出てきたわ。」
寒河江、麗さんはカタカタ、いやマシンガンのような速さでキーボードを打っていく。
部屋にあった近未来的な大きなモニターに、写真が映し出された。
「八島宰司(やじま さいじ)」
「八島会 会長」
「54 男性」
輪郭は四角に近く、厚い唇、立派に生えた髭、……高そうなアクセサリー。
いかにも、って感じの男性の写真が表示された。そして、その人の個人情報も、事細かく。
最後に地図が。緯度、経度、何時何分何秒まで表示され、赤いアイコンが真ん中を表示している。
「凄い……」
私は無意識に言葉を零した。
スパイ映画でも観てる気分だ。
……でもプライバシーの侵害とか、個人情報の保護とかなんとか、大丈夫なのかな?
……ま、いっか。
私の感覚もさっきから麻痺し始めた。