白い狐は出会いの季節
城内先生が、扉を開けた瞬間。



「うっ……。」



吐き気を催す異臭、異臭。
甘い臭いが、渦巻いて目眩を誘う。


何？この臭い…。
困惑している私を横目に、城内先生は大声で言った。



「えー。みんな、おはよう。今日は前から言っていた転校生の紹介だ。はい、桜井、自己紹介。」




城内先生は目線をこちらに向ける。
私は一体何に怯えて、何かを覚悟して黒板の前に立った。



顔を上げると生徒の顔が見えた。
生徒をみて更に困惑した。


「き、今日、この私立小鷹高等学校(しりつこだかこうとうがっこう)に転校してきた桜井花楓ですっ！よ、よろしくお願いしますっ！！」



前の学校では見なかった光景。
女子は髪にウェーブをかけ、メイクをしている。
男子は当たり前のようにピアスをし、金髪、銀髪、思い思いに髪を染めている。



……ここ、学校だよな？
そんな疑問まで浮かんでくる。


「あー、桜井の席は後ろの方だな。あそこに座れ。」



城内先生は指を指す。
……男子生徒の隣。
そこに座っていた男子生徒は驚いてから、嬉しいそうな顔をして私に手を振った。

……よかった。まともな人だ。


私は席に移動した。


その時の事だけど、みんなの目が怖かった。


いや、転校生が珍しいのはあたり前だけど。




「クスクス」

「フフフフ」



私を値踏みしているような、吟味しているような目が怖かった。
< 4 / 121 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop