白い狐は出会いの季節
...。
殴られ始めてからどれぐらい経ったんだろう。
抵抗できないまま体の至る所を殴られて、もはや痛覚が麻痺し始めた。
ヴー...。ヴー...。
何かが小さく震えた。
携帯の通知かな?
男もそれに気づいたのか殴るのをやめ、動きを止めた。
「なんだ?電話か?」
上着のポケットを探ると、私の白い携帯が出てきた。
「んだよ。まだガラケーとか使ってんのかコイツ。」
男は電話に出た。
...私に電話?
千尋姉さんかな。でも姉さんは確か、しごと。
じゃあ、だれ?
「おい、てめぇ誰だ。あ?真唯?」
...っ!!??!
「あ、ま、......くっ!!」
痛みで上手く声が出せない。
名前を呼ぼうとしても、うめき声しか出ない。
男が何やらボタンを押した。
スピーカーをONにしたらしい。
電話の相手の声もきこえる。
「転校生なら俺ら曇天が拉致したぜ。こっちは昼からやられっぱなしなんでな。」
『ふざけるなよ!!おいっ!!桜井さんは無事なのかよ!!』
「あ?桜井?あぁ、転校生な。...おい。」
「...ぐ、っ、あああああ!!!」
いきなり、首を締められる。
酸素を求めて呻き声が一気に溢れて流れた。
『...!?!!桜井さん!!桜井さんっ!!!!』
「返して欲しいか?」
『っ...。何が目的なんだよ。』
「さぁな、もし返して欲しければ繁華街に一人で来るんだな。じゃあな。」
そう言ってすぐに携帯を地面に叩きつけた。
そして足で踏みつけた。
携帯は半分に割れ、細い部品が地面に転がった。
「...、ま、いに、な...にする...つ...ぅ。」
真唯に何するつもり、言葉は掠れて、空気の音にしかならなかった。
「んで、この転校生どうするんだよ。」
「あ?多分この顔じゃ女としては価値ゼロだな。」
「だけど、実験材料としては使えるだろって、あいつらが言ってたぜ。」
「あぁ、あいつら。なんだ?新種のヤクにでも浸すのかよ。」
恐ろしい言葉が飛び交う。
きっと私の未来の話だ。
きっと、真唯も捕まれば、こうなってしまうんだ。