白い狐は出会いの季節
「...。」
それは一瞬だった。
突然の攻撃に何故か反撃できず、少し腫れた右手を押さえることしか、今はできなかった。
「...は?」
思わず空気が漏れる。
ようやく何がを起こったか、理解しはじめた。
バケモノは僕の唯一の武器である拳銃を叩き落としたのだ。
少し離れた所に転がっている拳銃が、その証拠だよ。
「...。」
つうっ、と首から流れるのはひんやり冷たい汗。
そして、首にあてられた手。
それはナイフの様だった。
ただの女性のか弱い手。
さっきまではそうだった筈なのに。
まるで、動けば僕の命がない。
そう、脅されているわけでもないのに、
僕の体は一寸たりとも動かなかった。