白い狐は出会いの季節
「...。」
しばらく黙っていると、
す、と僕の首筋から手が離れた。
それと同時に一気に力が抜け、力なく地面にへたれ込む。
「か、十七夜さんっ!!!」
倒れ込みそうになったのを、真唯が支えてくれた。
ようやく時間が動き出したように思えた。
さっきまで時間はずっと止まっていたかのように思えたよ。
バク、バクと高鳴る心臓の音が僕がまだ生きていることを伝えている。
「...。」
何を思ったのか、バケモノはじっと前を見ている。
僕達の背にある倉庫の出入口だ。
「やっと僕らが敵じゃないって事が分かったみたいだね?」
絞り出した声がこれだ。
若干震えていて、いつもの自信で満たしていた声、言葉は出なかった。
「当たり前だよね?だって僕はともかく真唯は君のクラスメートなんだからさ。でしょ?」
「...。」
また、無反応。
もう、日本語通じてるのかなと疑うレベルでコミュニケーションがとれない。
「もういいや。面倒くさくなってきた。どうやら曇天メンバーは死んでないし、さっさと君連れて帰るから。」
そう言って僕はバケモノに近づいた。
闇にも光にも染まっていない目に近づいていく。
「...。」