白い狐は出会いの季節

一難

それからはあっという間だった。


前の学校で使っていた参考書やノートを使って勉強したり、


お互いの事を話したりした。


「...じゃあ桜井さんって最初入学した学校からすぐ転校して来たんですね、今四月ですけど。」


「そうだね。でも小学校とか、中学校とかの記憶も曖昧だし、転校した理由もよく分かってないんだよ...。」


だからほんとたまに、私の事を忘れてしまう事もある。


例えば、自分は誰で、何歳で、誕生日はいつ、だとか。


「多分友達もいなかったと思う。」


「えぇ!?桜井さんすごくいい人なのに!?」


「あー。多分覚えてないだけ?かも。」



「でもこの学校より絶対まともな高校ですよ。」



そんな話をだらだら続けてた。


私はすごく楽しかった!


真唯も教室にいた時とは表情が変わっていたし、


この学校の雰囲気を、忘れられるようなそんな時間だった。


その時間の終わりを告げたのは、昼休みの始まりを告げるチャイムだった。




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