スカウト
「良かった。ふたりが知ってる五十鈴のイメージってどういう感じ?」
「カッコいい俳優さんとか、モデルさんがたくさん所属しているっていうイメージです」
私がそう答えると、蓮は隣で頷いていた。
「蓮くんもよく頷いていたから同じような感じかな?」
社長は一息ついて言った。
「今回、佐伯くんにスカウトする人のイメージとして選んでもらったのが、笑顔かがきれいな男の子っていう事なんだけど、ふたりは着いてきたときに俳優とかの仕事したいっていう感じで居たならごめんね。今回ふたりがスカウトされたのはアイドルグループを作るため。それでもここに入ってくれる?」
私も遂に覚悟を決めた。
バレるまでここにいる。
「はい、楽しみにしてます」
こうして、私と蓮は男になった。
「じゃあ明日の学校帰りに寄っていって。メンバーはもう決まってるし、デビュー曲も依頼してあるからもうほとんど準備が出来てるから後は顔合わせだけだから」
「「はい!」」
佐伯さんはロビーまで私たちを送ってくれた。
「ありがとうございました」
「気を付けて帰ってね」
「「ありがとうございます」」
緊張、焦り、驚きから解放されて一気に疲れが出た私たちは暫くなにも話さなかった。
沈黙を破ったのは蓮だった。 
「楓、どうしたらいいかな?」
「分からない。でも、とりあえず覚悟だけは決まってる。今から髪の毛切ってもいいって思ってる。」
「よし、切りに行こう!明日もこのカツラは嫌だから」
私たちが小学生の頃から行っている美容室へ行った。
「お姉さん、ボーイッシュな髪型に切れる?」
「出来るけど、いいの?こんな綺麗な髪の毛切っても」
「いいよ、もう必要ないから」
お姉さんはすごく綺麗に切ってくれた。
ふたりとも名前が男みたいだから男って言えば通るぐらいのカッコよさ。
「ありがとう。結構男の子みたいだね」
「そうだけど、ワックスでちょっとふわっとさせると女の子らしくなるよ」
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