小さな二人
アネモネ~恋の苦しみ~
『なーならどんな決断をしたとしても、絶対に幸せになれるから』
その康太の言葉に後押しされるかのように、私は帰ってからスマホの通話ボタンをタップした。
画面に(隆)の文字が浮かぶ。
電話して、何を言おうかなんて考えていない。
そもそも電話に出てくれるかも分からない。
でも自分の気持ちも思いも言わないままこのままとか、
それは絶対に嫌…!!
7コール目の途中で、『…何?』と小さい声が聞こえた。
「あ…もしもし私!ご…ごめんね?供給に帰っちゃったりして…」
『別に。俺がそうさせたんだし。』
さっきの苛立ち交じりの声とは反対の弱々しい声。
『…ごめんな、あんなふうになっちゃって…』
「…うん。」
そう言ったあと少し長めの沈黙が流れた。
『那月は優しすぎるよな』
「え?」
『優しすぎて、那月の本音、分かんなくなってた。
俺のこと本当に好きなのかなとか、さ…
本音で話してくれてんのかとか、気づけば疑ってばかりで…』
「…」
『そんなんだから俺、那月に甘えて、こんな事して、
大丈夫、那月は優しいから俺から離れることはないとか、勝手に余裕ぶっこいて…
ほんと、バカだよなー…』
「そっか…」
『なぁ那月、本音聞かせてよ。
今、どう思ってんの?』
今…
私の本音は…
私は少し間を置き覚悟を決めてから口を開いた。
「正直…すごくショックだった。信じられないし、信じたくない…
でも、もうそれが現実なら、しょうがないと思うの。」
受話器越しから隆の緊張が伝わってくる。
私は大きく息を吸って、ゆっくり言葉を吐き出した。
「―――今まで、本当にありがと
もう、サヨナラだよ、隆…」