御曹司と愛されふたり暮らし
「あっ、ちょっと近いかも……あ、うん、そのくらいの距離で」

結局、私たちはハルくんの部屋のハルくんのベッドで一緒に寝ることになった。

あくまで添い寝。

だけど、やっぱりすごい緊張する……!
距離感を指示したって、「でも俺、寝相良くないから、多分寝てる間に密着する気がする」とか言ってくるし……!


「お、お休みっ」

もういい。寝たもん勝ちだ!
…….ドキドキしすぎて寝られるかわからないけど……!


どのくらい目をつむっていただろう。
ドキドキは少し落ち着いてきたけれど、まだまだ眠れそうにない。


「ハルくん。寝た?」

小さな声で、そっとそう尋ねてみる。

返事はない。疲れてるって言ってたし、寝たのかなと思ったら。


布団の中で。そっと、さっきみたいに、手を握られた。


「……起きてる?」

もう一度尋ねると、「うん」と返ってきた。
そして。


「ドキドキして寝られないんだよね」

とも、笑いながら言われて。

も、もう。冗談なのか本当なのかわからないよ。



「わ、私はもうすぐ寝れそうっ」

「へぇー」

私の精いっぱいの強がりのウソは、明らかにあっさり見破られている。



それでもいい。




「お休みなさい、ハルくん」

「お休み、花菜」


この手に感じる温もりは、どこにも逃げない、私だけのものだと、今はそう思えるからーー……。
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