御曹司と愛されふたり暮らし

「……は?」

ハルくんはきょとんとした顔で私を見つめる。

わけがわからないと言わんばかりの表情。
いきなりこんなこと言ったら、誰だってそうなっちゃうよね。


私はゆっくりと、事情を話し始める。

「あのね、前に住んでたアパートの一部屋が空くことになったんだって。
この家でのハルくんとのふたり暮らしは楽しいけど、やっぱり私、あのアパートに戻ろうと思って」

「ちょっと待てよ。それって、俺がこの家の支払いしてるから、って前に花菜が言ってた理由でか? そんなの、今は俺たち付き合ってるんだから、金のこと気にする必要なんか……」

「違う。付き合ってるからこそだよ。ハルくんに釣り合う女性になりたいからこそ、ハルくんの負担になりたくないの」

「負担なんかじゃない! そもそも最初は俺が強引に花菜をこのマンションに連れてきたんだから!」

「でも、このマンションで暮らすって決めたのは私の意志だし! 居候はもう嫌なの!」

するとハルくんは……。


「居候ってなんだよ! いつまでそんなこと言ってんだよ、バカなのかお前は!」

と、声を荒げた。


普段怒らない彼が声を荒げたことに私は驚く……けど。



「なんでわかってくれないの……ていうか……」


私にわいてきたのは、辛いとか、戸惑いとか、そういう悲しい感情じゃなくて。



「バカってなに!!!」

私の気持ちをなにもわかってくれない彼への、怒りの感情だった。
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