御曹司と愛されふたり暮らし
普段は比較的クールで落ち着いているハルくんも、さすがにぎょっとしていた。私がハルくんに対してこんなふうに怒っている姿を見せるのは珍しいことだから。

だけど、一度怒ってしまえば、あとはもうこの感情は止まらない。


「私はっ、ハルくんのことを想ってるからこそ、いっぱいいろいろ考えて、こうして結論を出したのに!
私の考えを否定するのはいいよ! でも、バカってなによ!」

だけど、ハルくんの方にも言い分はあるようで、彼も手のひらでテーブルをバンッと叩いて、さっきよりもさらに声を荒げ。

「花菜の考えは花菜の自己満足だろうが! 俺のことを想ってるからこそとか言っておいて、俺がそれで喜ぶとでも思ってるのかよ!」

「毎日一緒にいたいと思ってくれているならそれはもちろんうれしいけど! 私は、もっと自信を持って、ハルくんに釣り合う女性になりたいの!」

「釣り合うってなんだよ! 俺はお前のことを、初恋の大事な女だったって思ってたけど、お前は俺のことを、会社の社長の息子だから金持ってる男、とかそういうふうに見てるってことかよ!?」

「そんなわけないでしょ! なに言ってるの! ひどい!」

「もう、お前の考えてることも言ってることも意味わかんねぇよ!」

その後も口論は続き、最終的にはお互いに口を揃えて「ふん!」と子どものケンカの終止符のような一言で終わった。
言い争いが終わった後は、お互いに無言でお夕飯を食べ、就寝するまで一切口を聞かなかった。

多分、はたから見れば完全に子ども同士のケンカだろう。
ハルくんの言っていることはわかる。私とこれからも一緒に暮らしていきたい、と思ってくれているということも。
きっと、ハルくんも、私の言っていることは本当は理解してくれていると思う。だからこそ、いつもみたいにやさしい言葉で私を説得しようするのではなく、私と気持ちが平行線になってしまったことで、つい声を荒げてしまったのだろう。

それならば、どうすればいいのかな。どうすることが、正解なのかな。

わからないや……。

結論がなにも出ないまま、私は部屋の電気を消し、ベッドにもぐりこんで目をつむった。けど、なかなか寝つけなかった。
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