御曹司と愛されふたり暮らし
「それじゃ、乾杯ー!」

日焼けの似合う、体格のいい男性の明るい音頭と共に、私たちが手に持つジョッキがガチンと元気よくぶつかり合った。

週末。金曜日の仕事終わりの夜八時。最近できたばかりのキレイでオシャレな居酒屋で、男性四人、女性五人がテーブルを挟んで会話する――まぁ、いわゆる合コン。


一緒に来た女友だちはみんな楽しそう。

でも、私は正直、さっきから帰りたくてたまらない!
アルコール度数の少なそうなイチゴサワーの入ったジョッキを両手でギュッと握りしめ、この時間が早く過ぎてほしいと願いながら、ニガテなお酒をちびちび飲んでいく……を繰り返している。
だって、「女グループのみでの飲み会」って言われたから来たのに、実は合コンだったんだもん!騙されて連れて来られたんだもん!なにより私、男性すごくニガテなんだもんー!



「花菜(かな)ちゃんだっけ? お酒ニガテ? てゆーか合コンとかニガテ?」

茶髪でピアスを何個かつけた、少し軽い感じの男性が私の隣に移動してきて、座布団に腰をおろす。そして、私の肩に腕をまわしてきた……。うぅっ、こんな言い方も良くないけれど、今日来ている男性の中で一番ニガテそうなタイプの人だ……!
で、でもがんばってなにか話さなきゃ!


「ハ、ハイ。中学校から大学までずっと女子校だったので、男性の友だちとか知り合いが少なくて」

「へー、でも職場には男の社員いるでしょ?」

「そうですね。でもあまり会話したりはしないかな……」

「マジー? ピュアー! 俺の好みー!」

そう言うと男性は、肩に手を回したまま、身体をさらに密着させてきた。
ひぃー! どうしようー!


と、私が軽くパニックに陥りそうになった、その時だった。
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