御曹司と愛されふたり暮らし

「じゃ、とりあえずハルに自己紹介してもらうかー」

隣に座る茶髪ピアスの男性が、モデルのような男性にそう言う。


……ハル？　”あの男の子”のあだ名と同じ……。


……あれ？

急に、胸がざわつく。

この人を、どこかで見たことあるようなさっきの感覚。

もしかして……。


そんなまさかね、と思いながらも胸のざわめきが強くなるのと同時に、モデルのような男性は口を開いた。


「矢上　遥貴（やがみ　はるき）です。仕事の関係で遅れました。よろしく」


……やがみ　はるき。



彼は、ほかの男性のように合コンだからといってソワソワした様子は一切なく、冷静に、クールに、ちょっとそっけないくらいの態度でそう言ってあいさつを終えた。
だけど、私以外の女性はみんな、「ほんとに彼女いないんですか？」「お仕事なにしてるんですか!?」「おいくつですか!?」と彼に一層釘付けになった。


私はというと。



「……っ」

驚きで、声が出なくて。パクパクと、金魚みたいに口を動かすことしかできない。

そんな私を隣から不審に思ったのか、茶髪ピアスの男性が、
「どうしたの？　花菜ちゃん」
と、私の名前を呼ぶ。


すると、目の前に座る彼――ハルくんが、私を見つめて。


「今、かなって言ったか？

やっぱりお前、戸山（とやま）　花菜か？」


そう聞かれ、私はまだ声が出ず、でもブンブンと首を縦に振った。



ウソでしょ。まさかハルくんと、こんなふうに再会するなんて。