御曹司と愛されふたり暮らし
「……さっき花菜が言ってたことなんだけど」

ゆっくりと沈黙を破るように、ハルくんがそっと口を開く。

さっき私が言ったこと……?
『後悔と懺悔でこんなことされるくらいなら、相手にされない方がマシ』と言ってしまったこと、だよね?

ひどいこと、言っちゃったよね。やさしいハルくんを、きっとすごく傷つけた……。


と、思ったんだけど。



「俺のこと、小学生の時に好きだったってほんと?」

「そっち⁉︎」

思わぬ言葉に、私は驚いて思わず彼に振り返る。たった今まで、気まずさと恥ずかしさで目を合わせられなかったのに。



だけど私は、がんばってそのまま彼の目を見つめたまま……


「う、ん」

と、答えた。
変なふうに緊張してしまって、声が小さくなってしまったけど、本当の気持ちを伝えることはできた。

私がハルくんのことを好きだったのは、本当のことだ。


すると彼が、思いがけない言葉を返した。


「俺も好きだった」

「え?」

聞き間違いかな?
私は何度も瞬きをして、彼を見つめる。驚きと戸惑いが大きくて、目を見つめることにさっきまでのような恥ずかしさなどはなかった。


「俺も好きだったよ。控えめで大人しいところとか、女子みんなにやさしいところとか。ほかの男子のことは避けてたのに俺にだけ笑顔を向けてくれていたことも、うれしかった。


花菜は、俺の初恋だった」



初、恋。


真剣な瞳でまっすぐに見つめられながらそう言われ、思わずドキッとしてしまった。
今、告白されているわけじゃないのに。小学生の時の話なのに。
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