御曹司と愛されふたり暮らし
「うれしかったけど、申しわけない気持ちや恥ずかしさが勝っちゃって、あんなこと言っちゃったの。本当に……ごめん」

「いや、俺の方こそ強引すぎたよな。あと、デリカシーもなかった」

「強引なやさしさもうれしかったよ。デリカシーがないことは、まあ否定はしないけど」

「だよな」

お互いに顔を見合わせて、私たちはようやく笑い合うことができた。


合コンでハルくんと再会できて、とてもうれしかった。

だけど、極上な男性に成長してしまった彼を見て、私はいろいろと意識したり、緊張したり、うれしい半面で心のどこかに余裕がなかったのも事実で。

でも、今。小学生の頃の思い出にお互いに触れて。あの頃の気持ちを思い出して。


小学生の頃、純粋に楽しくて笑い合っていた時みたいに、今、ようやく心の底から「楽しい」って思って笑ってる。



……だけど、だからってこのままあの極上マンションで甘やかされながら同居生活をするわけにはいかない。


「ハルくん。私やっぱり、あのマンションは週末で出て行くね」

私がそう言うと、彼はなにも言わずに、ただ私を見つめた。たぶん、私が言いたいことは大方わかっているのだろう。

「あんな素敵なマンションでずっと暮らせたら、毎日すごく幸せだと思う。
でも、あのマンションに暮らすってことは、ハルくんに甘やかされてるってことだから。
ハルくんはケガのお詫びだって言ってくれたけど、気持ちはもう充分すぎるほどに受け取ったから。
だからこれからは……

私のこと甘やかすんじゃなくて、もっと普通の……小学生の時みたいな、対等な関係になってくれる?」


これ以上、ハルくんに迷惑はかけられない。

甘やかされたいとも、思わない。


ただただ、対等に。普通のお友だちに。


小学生の時みたいな関係を、大人になった今、再び築いていきたい。



それが今の私の、正直な気持ちだ。
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