御曹司と愛されふたり暮らし
――ハルくんとは、小学生の時の同級生だ。
四年生から六年生までクラスが同じだった。
昔から引っ込み思案で内気な私は、四年生のころ、その性格をクラスの男たちにからかわれ、いじめられていた。
今思えば、異性がニガテなのはあのころからでもあったのだけれど、ハルくんだけは違った。あのころいじめられていた私を、ハルくんが助けてくれた。
それがキッカケで、私はハルくんに懐いてしまったというか、とにかく、男子はニガテでもハルくんのことは好きだった。
私が話しかけてもハルくんは嫌がらなかったし、放課後ふたりで寄り道しながら遊んだこともあった。
そんなある日のことだった。小学六年生の時。卒業式を一週間後に控えた、ある日の放課後のことだった。
誰もいない裏庭で木登りしているハルくんをたまたま見つけた。
なにしてるの?と尋ねれば、「景色がすごくいいから」と彼は答えた。その木は学校の敷地内で一番の大木で、確かにその木の上から見る景色はきっと絶景だろうなと私も思った。
「花菜も登る?」
てっぺんまで登った彼に、私は尋ねられた。
「……うんっ」
正直、高いところはニガテだった。絶景も、怖い思いをしてまで見たいと思ったわけではなかった。
ただ、ハルくんが誘ってくれたことがうれしかった。ハルくんとふたりで、絶景を共有したかった。
四年生の時に助けられてから、二年が経って。私はいつしかハルくんのことが好きになっていたから。
それが私の初恋だった。