御曹司と愛されふたり暮らし

そうして私は、日曜日にアパートに戻ることを決め、金曜日と土曜日で荷物をまとめた。

まとめた、といってももともと荷物はそんなになかったんだけど。


極上マンションには、ハルくんはもう少し住み続けるとのことだった。

俺もこのマンション案外気に入ったし、仕事にも行きやすいし。と彼は言った。


そして、



「だからいつでも遊びに来いよ。今度は普通の友だちとして」

と言ってくれて、とてもうれしかった。



そうして迎えた日曜日。

私の荷物をすべてまとめたバッグを持ち、アパートに戻った。

今日はハルくんも時間があるとのことで、いっしょについてきてくれた。
荷物を簡単に片づけたら、どこかでいっしょにお昼ご飯でも食べよう、なんて話をしながら、電車に揺られ、アパートに向かった。



ちょっぴり久しぶりのアパートは、当たり前だけどなにも変わった様子はない。

ただいま、って心の中でつぶやいた。
極上のマンションももちろん素敵だったけど、庶民の私にはこのアパートの方がしっくりくる。社会人になってからずっと暮らしている家だから、愛着もあるし。


そんなことを考えながら、バッグの中から鍵を取り出し、玄関を開けようとすると、ちょうど大家さんが隣の部屋から出てきた。
このアパートは二階建てで、一階と二階に三部屋ずつある。私の部屋は一階の真ん中。大家さんは、私の部屋の左隣に住んでいる。


「大家さん、こんにちは。一週間留守にしていてすみませんでした」

私がそうあいさつすると、大家さんはキョトンとした顔で私を見つめた。


そして、こう続けたのだった。

「戸山さん、あんた、この家出て行くんじゃなかったかのぅ?」
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