御曹司と愛されふたり暮らし
「うんっ。行ったね」

「懐かしいよな。確か団体行動中に迷子になっちゃった班があって、先生大慌て」

「あ……それ私の班だ……」

「えっ、そうなの」

「ほかの女の子がおトイレに行きたくなっちゃって、みんなで待ってたんだけど、その間にみんながどっちへ行ったのかわかんなくなっちゃって」

うぅ。思い出に浸って懐かしくなるはずだったのに、懐かしいというより恥ずかしいんだけど。


でも、


「あははっ。まあそれもいい思い出ってことで」

と、ハルくんは笑ってくれるから。

まあ、そんな昔の思い出を今さら責めてくる人もいないと思うけど、それでもやっぱり、ハルくんのこの明るい笑顔、いいなって思う。


そして。



「じゃ、今度の日曜日こそはいい思い出を作りに、一緒に水族館行こうな」


ちょっとした冗談を交えてそう言ってくれたハルくんに私も、


「うんっ」

と、笑顔で返した。
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