御曹司と愛されふたり暮らし
そして、約束の日曜日。
「準備できた?」
部屋の外から、ハルくんが声をかけてくれる。
「う、うん」
私は鏡の前で、髪や服の最終チェックをしてから、お気に入りのハンドバッグを持ち、「お待たせ」と部屋を出た。
「お、かわいい」
私の姿を見て、ハルくんはそう言ってくれる。
お気に入りの白のオフタートルニットワンピに、買ったばかりのピンクのチェスターコート。
メイクもたっぷり時間をかけたし、髪の毛も巻いてみた。
アクセサリーも普段はあまりつけないけれど、前に一目ぼれをしてちょっと奮発して買ってみた、赤いリボンが揺れるイヤリングをつけたりして。
ハルくんは彼氏じゃなくて友だちだ。一緒に出かけるからといってこんなに気合いを入れてオシャレするのはちょっと違うかもしれない。
でも、私にはオシャレをせずにはいられない理由がある。それは、私がハルくんのことを気になっているからとか、そういうわけではなく……。
「俺ももう少しオシャレすれば良かったかな? 割とフツーの格好しちゃったけど」
「いやっ、ハルくんはそのままでいいです!」
ていうか頼むから、それ以上カッコよくならないでください!
ハルくんは黒のピーコートに、細身のデニムを着用していた。
ハルくんは『フツーの格好』と言っているけれど、彼の場合、たとえなにも着ていてもモデル顔負けのカッコ良さなのだから、それ以上オシャレなんてしないで!って思ってしまう。だって、オシャレをしてさらにカッコ良くなった彼の隣を歩くには、相当な勇気を要するから。
私が今日、ここまで気合いを入れてオシャレをしたのはそういうわけだった。彼と一緒に外を歩く以上、少しでも彼に釣り合っていなければ、周りの視線にいたたまれなくなりそうだった。
まあ、私がちょっとオシャレをしたくらいじゃ、もちろん彼にはちっとも釣り合ってはいないのだけれど。いいんだ、自己満足だから。自分の気持ちの問題だから。