御曹司と愛されふたり暮らし
「じゃあ、さっそく行きますか」

ハルくんがにっこりと笑ってそう言ってくれる。
戸締まりを確認して、私たちはマンションを後にした。


水族館へは、ハルくんが車を出してくれた。
今まで、まだ乗ったことのなかったハルくんの車は、シルバーの大型セダン。
私は車のことはよくわからないけど、高級車だということは知ってる。
車の外見も中身もすごくキレイだし、大事に乗ってるんだろうな。
運転に関しては、私はまったくできないからお任せするだけで本当に申しわけない。その一方で、慣れたハンドルさばきにうっかり見とれてしまいそうになり、ダメだダメだ、と私はハルくんに怪しまれない程度に首を小さく横に振った。

そして十数分、車は水族館に到着した。




ハルくんとの同居生活は、いくらかは慣れたつもりでいた。
気になる相手とはいえ、元同級生で、性格はいい意味で変わっていない。再会した頃こそ緊張したけど、今は普通に話せるし。

でも、それはふたりきりの時だけ。
ふたりで外出するとなると、話は変わってくる。

まずハルくんは、行き交う女性が必ず振り向くといっても過言ではないくらいの、極上のイケメンだ。あの合コンでも、女性全員ハルくんに見とれていた。
行き交う女性たちがハルくんのことを見るということは、ほぼ必ず、隣を歩く私にも目を向けられる。
そう、現にチケット売り場に並んでいる時もそうだったし、チケット売り場のお姉さんもそうだったし、入場して館内に足を踏み入れ始めた今もそうだ。

ハルくんだけが見られるのはまだしも、私に『なんで隣にいるのがあんな子なの?』っていう悪意混じりの視線が向けられるのには、まったく慣れそうにない。
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