御曹司と愛されふたり暮らし
その後、館内でお昼を食べたり、イルカショーも見たりして。

気づけばあっという間に十五時近くになっていて、そろそろ帰ろうかという話になった。


出口に向かって歩いていると、ふとお土産コーナーが目に入った。


「ん? なにか買ってくか?」

ハルくんにそう言ってもらって、私は素直に「うん」と頷いた。
お土産が欲しかったというよりは……今日すごく楽しかったし、ハルくんと水族館に来たっていう思い出が欲しかった。さすがにそれは彼には言えなかったけど。


ボールペン、キーホルダー、ぬいぐるみ、いろんなものを見て、どれもかわいかったけど、私はポストカードが気になり、一枚買うことにした。

「どの柄買うんだ? イルカ? ペンギン?」

ハルくんにそう尋ねられ、私は手に取ったポストカードを彼に見せながら、
「イワシ」
と答えた。


「イワシ? 別にいいけど、イルカとかペンギンの方がかわいくないか?」

彼はちょっと驚いたような表情で私にそう聞いてくる。多分、私はかわいいものが好きだから、イメージ的にイワシよりイルカやペンギンを選ぶと思ったのだろう。現に、普段の私ならそっちを選んでいたかもしれない。
だけど……。


「これがいい」

さっき、ハルくんとイワシの話をしたりして、すごく楽しかったから。
たくさん笑顔になったから。
楽しい思い出を、ずっと残せるように。


するとハルくんが。

「じゃあ俺もイワシのやつ買おうかな」

と、私が手にしたものと同じイワシのポストカードを手に取った。



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