御曹司と愛されふたり暮らし
「そっか……」

彼は私から視線をずらし、前を向いて、


「……四葉も、俺のせいでいろいろ思いこんだりしてたのかな」

と、切なそうにそう言った。


「あ、ごめん。それは違うと思う。藤森さんには、ちゃんとお断りのお返事してたんだよね? それなら、ハルくんのせいじゃないよ」

「……ありがと。でも、花菜には嫌な思いさせたな」

彼は再び私の目を見てくれたけど。その表情はやっぱりひどく切なげだ。


「……違う」

きっと、人の心に正解なんてない。彼が落ち込む必要はない。
そして、正解がないなら、私は正直な自分の気持ちを彼にぶつけなければならない。


「嫌な思いなんてしてない」

彼は変わらない表情のまま、じっと私を見つめる。


「嫌な思いなんてしてないよ。でも……ハルくんがいつも私にやさしくしてくれるから。それだけでも、ド、ドキドキしちゃうことがあったりするの。それなのに、手を握られたりしたら……緊張して、でも、



うれしくなっちゃったりするから……!


だけどそれは私の勘違いだから!
やっぱり違ったんだって思ってガッカリしたくないの!」

これは完全に、私の自分勝手な主張だ。
だけどハルくんは、まっすぐに私の瞳を見つめてくれていた。
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