猫な私の甘い恋
バンッ!

扉の開く音がどこからか聞こえた。

「ったく。世話焼かせんなよ。」

聞き覚えのある声。涙でぼやける瞳を一生懸命に開き、音と声のする方を見る。

「ひ、彪。」

そこには汗だくの彪が立っていた。手足には少しかすり傷がある。きっと私を見つける為にいろいろな場所を廻りに廻ってくれたのだろう。

「おい。お前ら。早く麗から手ぇ離せよ。怖がってんじゃねぇか。」

そう言われ、頭にきたのか私に不気味な笑みを見せてから彪の前まで行く。

「は?なんなんだよお前は。麗ちゃんのなんなんだよ。」

いきなりの問いに言葉が詰まる。

そりゃそうでしょうね。だって私の何でもないんだからね。ただの、ただの邪魔者。私は、あいつなんか好きじゃない。

「俺は…」

突然何かを決心したように彪が口を開く。

「俺は…麗の何でもない。何、でもないけどな。努力してんだ。お前らみたいに強引にじゃなくて心から麗を大切にしたいと思ってるから。麗からも大切だと思ってもらいたいから。俺はお前らと一緒じゃねぇんだよ。麗は連れて帰る。今、俺凄く怒ってるからな?」
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