ROOM 2005
今日は厄日。
厄を払い除けるには掃除が一番。
各客室の手入れをいつもより念入りに行っていく。
ピカピカに磨かれた鏡、パリッと張りのあるシーツ。
ホテルの客室はこうでなくちゃ。
光希はメイキング道具を一式押しながら誇らしげに廊下を歩く。
アカデミー女優がレッドカーペットを歩くみたいに。
残りは2005号室。
洋子の情報とはちがい、断りのサインはトアノブに提げられていなかった。
チャンスだと踏んだ光希は、さっそく入室する事にした。
はりきって入ったはずが拍子抜け。
一週間ずっと手付かずだったとは思えないほど室内が綺麗だった。
「やっぱり、最高のお部屋……」
光希は大きな窓の外を眺めて感嘆する。
東京タワーと都内が一望できる客室は沢山あるけれど、ここから眺める景色は別物。
全てのバランスが完璧なのだ。
「夜はもっと綺麗なんだろうな。見てみたい……」
思わず本音が漏れてしまう。
現状では逆立ちしたって叶わない夢。