ROOM 2005
2.
***
胸元にホテル関係者を示す名札が無いと気付いたのは、勤務を終えて更衣室で着替えをしている時だった。
ポケットやメイキング道具の荷台にも見当たらず、落とし物の知らせもない。
きっとあの時――…
湊先輩を突き飛ばした時に落としたんだ。
慌てていたから無くした事にも気付かなかった。あれが無いと困る。
光希は日か落ちて、ホテルが少し落ち着く時間帯を待った。
彼の部屋の前に立つと心臓がうるさく脈打つのを感じる。
すうっと息を吸って、吐くと同時にコンコンとノックした。
中から「はい」と湊先輩の声がする。
「光希です。ちょっとお尋ねしたい事があって……」
声を掛けると客室のドアはすぐに開いた。
「来ると思った。どうぞ」
湊先輩はドアを大きく開いて光希を招き入れる。