ROOM 2005
越えてはならない一線にまた足を踏み入れてしまった。
もう自分でも止める事はできない。
十二年という長い年月、抑制され続けた二人の恋情はジェットコースターのごとく落下していく。
「先輩……好き……すき……スキ……」
光希はベッドの中で壊れたブリキの玩具みたいに繰り返した。
お返しは身が溶けてしまいそうな優しくて熱い愛撫。
「前みたいに名前で呼べよ……」
「……りゅう」
名前を呼んだ瞬間、光希の目尻を涙が濡らす。
湊先輩はその涙をスッと口に含んだ。
そして、再びキスをする。
口内に広がる塩辛い味は二人が歩んだ日々そのもののようだった。
肌と肌が触れ合ってシーツが擦れる。
光希の心は天にものぼる幸福感と背徳心で満たされた。
この恋は誰にも知られちゃいけない。
明日、どんな顔をしてこの部屋で仕事をするのだろう。
湧き上がる背徳心は刺激の強い媚薬のようで、彼女の心を少しずつ麻痺させていった。