愛を紡いで、キスをして。
「ここって……」


和也に連れてこられた場所は、お台場にあるベイホテル。

レストランやバーを始め、チャペルやフィットネスまであり、ハイフロアからはレインボーブリッジと夜景が望めることもあって特にカップルに人気で、スタッフの対応もとても細やかなところまで行き届いているのだとか。
雑誌にもよく掲載されていて、ネットの口コミでもいつも人気ランキングの上位に入っているから、一度泊まってみたいと思っていた。

今日は宿泊するわけじゃないけれど、予想だにしなかった場所に連れてこられたことに驚いてしまって、私の手を引いてロビーを抜ける彼の顔を見上げた。


「最上階のレストランのクリスマスディナーを予約したんだ」

「えっ!?」

「たまには、こういうところもいいだろ?」


にっこりと微笑まれて、思わず言葉を失った。
ベイホテルの最上階のレストランでディナーができるなんて思ってもみなかったから、まだ思考が追いつかないのだ。
もちろん嬉しくて堪らないけれど、せっかくの憧れのホテルの雰囲気を楽しむ余裕もないままエレベーターに乗せられ、あっという間に三十階に着いた。


「いらっしゃいませ」


ウエイターに丁寧な身のこなしで出迎えられ、無意識に背筋が伸びる。
窓際のテーブルに案内された直後には目の前に広がる夜景に息を呑み、ウエイターが引いてくれた椅子に腰を下ろすまでに時間を要してしまった。

ふたり並んで窓に向かって座ると、すぐにシャンパンが用意された。


「一日早いけど、メリークリスマス。それと、八回目の記念日のお祝いも」

「……うん、メリークリスマス。それから、八年間ありがとう」

「こちらこそ」


シャンパングラスを小さく鳴らして乾杯をし、キラキラと輝く景色に目を奪われながらひと口飲んだ。
上品な香りのシャンパンは飲みやすく、グラスの中で踊る泡がテーブルに置かれたキャンドルと重なると幻想的で、それだけで酔ってしまいそうになる。


程なくして運ばれてきた料理は、アミューズと二品の前菜を始め、ムース状のスープも鮃のポシェも牛フィレ肉のポワレも、感激するほどの美味しさだった。
デザートのベリー系のムースも絶品で、アミューズからデザートに至るまで見た目にも味にも何度も感動させられた。

< 4 / 5 >

この作品をシェア

pagetop