愛を紡いで、キスをして。
人生で一番素敵なディナーの時間はあっという間に過ぎていき、名残惜しさを抱きながらレストランを後にした。
和也からのクリスマスプレゼントのネックレスはずっと欲しかった物だったし、私がプレゼントした腕時計もとても喜んでくれたから、文句のつけようもないようなイヴになった。
それなのに、どこか寂しさを感じてしまっているのは、やっぱり淡い期待が実ることはなかったから……。
イヴのデートで、記念日で、八年も一緒にいるのに、私たちの関係が進展することはなくて、幸せなはずなのに不安と寂しさが芽生えたのだ。
だけど、素敵な夜を演出してくれた彼に悟られたくなくて精一杯の笑顔でお礼を伝えようとした時、乗っていたエレベーターのドアが二十五階で開いた。
「言っておくけど、クリスマスはこれからだからな?」
「え?これから?」
意味深な笑みを浮かべる和也に反して、その言葉の意味がわからない私は、彼に促されるがままエレベーターを降りることしかできなくて……。
いくつかのドアを通り過ぎたあとにカードキーを見せられ、瞳を大きく見開いた。
「嘘……」
「どうぞ」
カードキーで開いたドアの先には、まるで夢のような空間。
広いソファーやテレビが置かれたリビングを抜けると寝室があり、その先には白で統一されたバスルームがチラリと見えた。
目の前のダブルベッドの奥の大きな窓の向こうには、宝石を敷き詰めたような夜景が広がっている。
その中でひと際存在感を放っている東京タワーとレインボーブリッジを見た時には、絵画のような景色に心を奪われて目が離せなくなった。
程なくしてデラックススイートルームだと教えられて、言葉を失ったまま呆然としていると、和也が瞳をフッと緩めて笑った。
「さすがに最上階は無理だったけど、今日は特別な日だから」
そう話した彼がポケットから取り出したのは、小さな箱。
なにが入っているのかはすぐにわかって、箱が開けられた時には瞳に涙が浮かんでいた。
「長い間待たせたけど、俺にはこれからも優子が必要なんだ。だから、結婚してください」
ドラマでよく聞くような台詞だけれど、和也から一番欲しかった言葉をようやく聞けたことに胸がいっぱいになって、涙を堪えることができない。
そんな私に向けられた破顔があまりにも優しくて、掠れた声で「はい」と零して大きく頷いた。
嬉しそうに微笑んだ彼に左手を取られ、薬指にダイヤのリングが嵌められる。
そっと顔を上げると、幸せそうな笑顔に見つめられていた。
「愛してるよ」
少しだけ照れ臭そうにした和也が、私の頰を伝う涙を拭うと、ゆっくりと顔を近づけてきた。
瞳を閉じた私は、まるで夢の中にいるような空間で素敵な夜景に包まれながら、世界で一番大切な人とそっと唇を重ねた──。
END.
和也からのクリスマスプレゼントのネックレスはずっと欲しかった物だったし、私がプレゼントした腕時計もとても喜んでくれたから、文句のつけようもないようなイヴになった。
それなのに、どこか寂しさを感じてしまっているのは、やっぱり淡い期待が実ることはなかったから……。
イヴのデートで、記念日で、八年も一緒にいるのに、私たちの関係が進展することはなくて、幸せなはずなのに不安と寂しさが芽生えたのだ。
だけど、素敵な夜を演出してくれた彼に悟られたくなくて精一杯の笑顔でお礼を伝えようとした時、乗っていたエレベーターのドアが二十五階で開いた。
「言っておくけど、クリスマスはこれからだからな?」
「え?これから?」
意味深な笑みを浮かべる和也に反して、その言葉の意味がわからない私は、彼に促されるがままエレベーターを降りることしかできなくて……。
いくつかのドアを通り過ぎたあとにカードキーを見せられ、瞳を大きく見開いた。
「嘘……」
「どうぞ」
カードキーで開いたドアの先には、まるで夢のような空間。
広いソファーやテレビが置かれたリビングを抜けると寝室があり、その先には白で統一されたバスルームがチラリと見えた。
目の前のダブルベッドの奥の大きな窓の向こうには、宝石を敷き詰めたような夜景が広がっている。
その中でひと際存在感を放っている東京タワーとレインボーブリッジを見た時には、絵画のような景色に心を奪われて目が離せなくなった。
程なくしてデラックススイートルームだと教えられて、言葉を失ったまま呆然としていると、和也が瞳をフッと緩めて笑った。
「さすがに最上階は無理だったけど、今日は特別な日だから」
そう話した彼がポケットから取り出したのは、小さな箱。
なにが入っているのかはすぐにわかって、箱が開けられた時には瞳に涙が浮かんでいた。
「長い間待たせたけど、俺にはこれからも優子が必要なんだ。だから、結婚してください」
ドラマでよく聞くような台詞だけれど、和也から一番欲しかった言葉をようやく聞けたことに胸がいっぱいになって、涙を堪えることができない。
そんな私に向けられた破顔があまりにも優しくて、掠れた声で「はい」と零して大きく頷いた。
嬉しそうに微笑んだ彼に左手を取られ、薬指にダイヤのリングが嵌められる。
そっと顔を上げると、幸せそうな笑顔に見つめられていた。
「愛してるよ」
少しだけ照れ臭そうにした和也が、私の頰を伝う涙を拭うと、ゆっくりと顔を近づけてきた。
瞳を閉じた私は、まるで夢の中にいるような空間で素敵な夜景に包まれながら、世界で一番大切な人とそっと唇を重ねた──。
END.