新選組と最強少年剣士
大きく手を叩き鳴らした音が、道場全体に響き渡った。


相撲とかであるあれだよ。


「あぐっッ‥‥‥!」


怯んだ立に向かって、回し蹴りを放った。


後遺症が残らない程度で、だが、本気で蹴ったため、立の身体はぶっ飛んだ。


防御ぐらいしてもらわなきゃなぁ。


ま、完全に怯んだし無理な話だろうけど。


咄嗟の判断って大事なんだよ?


「ぐっ、‥‥‥ごほっ、」


だいぶ効いたようだ。


床に手をつき、大きく息を乱している。


気づけば、なぜか道場にいる全員が僕と立を見ていた。


やりすぎじゃないのか?


全員の目が、そう僕に語りかけて来るようだ。


「‥‥‥っ、北凪‥‥‥!」


声をあげ、立に駆け寄る1つの姿。


佐ノさんだ。


膝をつき、息の整ってきてきた立の背中を軽く撫でている。


「剣壱‥‥‥!」


「なに?」


「ぐっ‥‥‥少し、やり過ぎじゃねぇ、のか‥‥!」


睨み付けるように僕に振り向いた佐ノさん。


だがすぐに僕の無表情に気づくと、苦虫を噛み潰したような表情になった。


僕はそんな二人になるべく笑みを向けた。


「じゃあ立、今日はここまでね」


「はぁ、はぁ、‥‥‥はい」


「またね。お仕事頑張って」


ヒラリと手を一振りし、僕は道場を出た。







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