ever after
【ever after】
十二月――
どこにいてもクリスマスソングが聞こえ、イルミネーションの点滅が目に飛び込んでくる時期になると思い出す。
僕の中には忘れることのできない花嫁の姿があった。
~*~*~
それは二年前のこと。
クリスマス当日、僕の勤めるホテルで挙式披露宴が行われた。
入社以来、ウエディング部門に配属されて五年。
披露宴は何度も経験していたが、キャプテンとして仕切るのは初めてのことで、かなり緊張していた……と思う、たぶん。
実を言えば、披露宴当日のことはよく覚えていないのだ。
原因はわかっている。
披露宴も中盤を過ぎたころ、花嫁の親友という女性がスピーチを始めた。
その直後、ふいに黙り込んだのがすべての始まりだった。
「…………いやよ。やっぱり、いやっ! あなたの赤ちゃん、もう堕ろしたくないの。お願い、私と結婚して……このまま、彼女と結婚するなら……私、この子と一緒に死ぬわ!」
お祝いムードに包まれた会場は、一瞬で凍りついた。
披露宴ではいろんなことが起こるという。
先輩の経験談にはすごいものがあったけど、幸い、僕はそんなケースにあたったことがなかった。
この日までは――。
どこにいてもクリスマスソングが聞こえ、イルミネーションの点滅が目に飛び込んでくる時期になると思い出す。
僕の中には忘れることのできない花嫁の姿があった。
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それは二年前のこと。
クリスマス当日、僕の勤めるホテルで挙式披露宴が行われた。
入社以来、ウエディング部門に配属されて五年。
披露宴は何度も経験していたが、キャプテンとして仕切るのは初めてのことで、かなり緊張していた……と思う、たぶん。
実を言えば、披露宴当日のことはよく覚えていないのだ。
原因はわかっている。
披露宴も中盤を過ぎたころ、花嫁の親友という女性がスピーチを始めた。
その直後、ふいに黙り込んだのがすべての始まりだった。
「…………いやよ。やっぱり、いやっ! あなたの赤ちゃん、もう堕ろしたくないの。お願い、私と結婚して……このまま、彼女と結婚するなら……私、この子と一緒に死ぬわ!」
お祝いムードに包まれた会場は、一瞬で凍りついた。
披露宴ではいろんなことが起こるという。
先輩の経験談にはすごいものがあったけど、幸い、僕はそんなケースにあたったことがなかった。
この日までは――。
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