ever after
『本日はわたしどものために、お越しいただきまして、どうもありがとうございました。途中、いろいろとお騒がせしまして、本当に申し訳ございません』
普通なら……いや、めったにないことではあるが。
とにかく、トラブルの原因がなんであれ、花嫁のほうがブライズルームに引き籠もって大泣きする。
ところが今回、トラブルを起こしたふたり――花嫁の親友は倒れて救急車で搬送され、花婿は披露宴会場どころか、ホテルからも姿を消した。
結果、被害者である花嫁ひとりが、最後まで会場に残ることになったのだ。
花嫁は招待客ひとりひとりに頭を下げ、最後のひとりが会場を立ち去るまで、お礼とお詫びを言い続けていた。
その姿は見ているだけで痛々しく、僕たちスタッフは何度も中座を勧めた。
だが彼女は『大丈夫です』と答えて、やめようとしない。
やっと最後のひとりが引き揚げたあと、僕は彼女に話しかけた。
「お疲れでしょう。おひとりになれる部屋を用意させていただきました。お着替えもそちらで済ませられるよう手配してありますので、しばらくお休みいただいてから……」
あえて“お嫁様”と呼ばず、ブライズルーム以外の部屋を僕の判断で用意した。
ところが、彼女はそれすらも断り、僕にまで謝り始めたのだ。
「ホテルの方にも大変なご迷惑をおかけしてしまって、本当に申し訳ありませんでした」
「とんでもない。こちらこそ……事前に察して、止めることができなかった僕のミスです。すみませんでした」
騒ぎを知った上司や同僚からは『招待客にアレをやられたら防ぎようはないさ。おまえのせいじゃない』と言われた。
でも彼女を前にして、そんな言い訳はしたくなかった。
普通なら……いや、めったにないことではあるが。
とにかく、トラブルの原因がなんであれ、花嫁のほうがブライズルームに引き籠もって大泣きする。
ところが今回、トラブルを起こしたふたり――花嫁の親友は倒れて救急車で搬送され、花婿は披露宴会場どころか、ホテルからも姿を消した。
結果、被害者である花嫁ひとりが、最後まで会場に残ることになったのだ。
花嫁は招待客ひとりひとりに頭を下げ、最後のひとりが会場を立ち去るまで、お礼とお詫びを言い続けていた。
その姿は見ているだけで痛々しく、僕たちスタッフは何度も中座を勧めた。
だが彼女は『大丈夫です』と答えて、やめようとしない。
やっと最後のひとりが引き揚げたあと、僕は彼女に話しかけた。
「お疲れでしょう。おひとりになれる部屋を用意させていただきました。お着替えもそちらで済ませられるよう手配してありますので、しばらくお休みいただいてから……」
あえて“お嫁様”と呼ばず、ブライズルーム以外の部屋を僕の判断で用意した。
ところが、彼女はそれすらも断り、僕にまで謝り始めたのだ。
「ホテルの方にも大変なご迷惑をおかけしてしまって、本当に申し訳ありませんでした」
「とんでもない。こちらこそ……事前に察して、止めることができなかった僕のミスです。すみませんでした」
騒ぎを知った上司や同僚からは『招待客にアレをやられたら防ぎようはないさ。おまえのせいじゃない』と言われた。
でも彼女を前にして、そんな言い訳はしたくなかった。