ever after
そんな僕に、彼女は申し訳なさそうに言う。


「謝らないでください。わたしのせいなんですから」

「あなたのせいじゃないと思います。悪いのはどう見ても……」

「いいえ! いいえ……わたしの責任です。わたしたち、大学生のときから付き合ってて、気づいたら十年経ってました。この人と結婚しなきゃ、一生できないかも……そう思い始めたら、乗り気じゃない彼の様子も、治らない浮気グセも、見ないフリをしたんです。結婚してしまえば、なんとかなるって」


それで結婚生活がなんとかなるものかどうか、独身の僕には見当もつかない。

しかし、こればっかりはたとえ既婚者でもわからないはずだ。
そう簡単にわかるものなら、世の中の離婚率はもっと減っているだろう。


この事態を引き起こしたのは浮気グセの治らない花婿と、親友の婚約者とわかっていながら付き合い、結婚式当日に妊娠までぶちまけた女性の責任としか思えない。


僕が慰めるつもりでそう言うと、彼女は弱々しく首を振った。


「浮気相手が彼女だって知ってました。知ってて、結婚式に呼んだんです。彼の妻になるのはわたしよって、見せつけたかった。でも、子供がいたなんて……。もし流産したら、わたしのせいですね」


彼女の頬を伝う涙に、そんなわけがない、と言いたかった。

絶対にそんなわけがないと、ここで僕が何千回と繰り返しても、きっと彼女の心には届かないだろう。

でも――


「夢を……叶えてください。どうか“最高のホテルで、お姫様みたいなドレスを着て、大好きな人と結婚したい”って夢を諦めないでください。そのときは、もう一度、もう一度だけ、僕にチャンスをください。どうか、お願いします」


ウエディングドレスを身に纏うこの日だけは、すべての花嫁に幸福でいてほしい。
彼女を幸福にできなかったことが、悔しくて……。

不覚にも涙が浮かび、僕は歯を食いしばった。


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