校庭に置いてきたポニーテールの頃
大樹は昼頃に帰っていった。

彼は休みの日になると、もっぱらスロットを回しているのだ。


テーブルの上に置いてある灰皿のごみを片付けてから、ため息を一つついた。

私はタバコを吸わないけど、部屋中に染み付いた大樹のタバコのにおいは好きだった。


部屋に残った彼のにおいを嗅ぐと、急に切なくなってしまう。


一緒にいる時はとても幸せな時間を過ごしているはずなのに、こうして彼が帰ったあとに襲ってくる寂しさは、付き合っているときにはなかった感情だ。


私の感じている幸せというものが、大樹によって造られたものであると実感してしまうからだろうか。


結局一緒にいたところで私の片思い。


本当にそれを幸せと呼べるのかと疑問に思うのは、いつもこの瞬間だけだった。

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