校庭に置いてきたポニーテールの頃
憂鬱な気持ちのままで、バレンタインデー当日を迎えた。

「あっか、唯、チョコ作ってきたよ。ちゃんとヒロに告白するね」


登校してきたマナが、いつもよりも緊張した面持ちで私たちに教えてくれた。

マナに「頑張ってね」とは言ったけど、心に負った傷がキリキリとえぐられていくよう。


きっと今日の放課後から、マナとヒロは付き合うことになるんだろうな。


「あ、宮西」

放課後になって、帰ろうと席を立ったときに大嶋に呼び止められた。

「ヒロ、今日部活遅れるんだって。もしかして、浅倉なのか?」


「うん、そうだよ」

今日は早く帰りたい。帰ってから、思い切り泣きたかった。


だから大嶋、早くあっちに行って。


もう教室にはマナもヒロもいなかった。

きっと今頃はマナがヒロにチョコレートを渡して、告ったりとかしているのかな。


ちょうど廊下の向こうから、チョコレートを手にした真綾ちゃんが、泣きながら教室に入ってくるところを見た。

いつも真綾ちゃんと一緒にいる友達が、真綾ちゃんのことをなぐさめている。

その状況で、私は全てを理解したんだ。

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