校庭に置いてきたポニーテールの頃
「宮西、俺が悪かった、ごめん」

突然大嶋が私に向かって、軽く頭を下げた。

「……なんで大嶋が謝るの?」


「諦めるか頑張るかって、お前に無理な決断をさせたから。

そのせいで、お前はこんなに……」


「ううん、これで良かったんだよ。私は大丈夫。澤田のときだってちゃんと立ち直れていたでしょ」


そう、今回のことは誰も悪くないんだ。

大嶋が責任を感じることはないし、ヒロを好きになったマナも、またマナを好きになったヒロも、さらには諦めるって決意した私も含めて、責められるようなことをした人は誰もいない。


今頃マナとヒロが一緒にいるところを想像するとやっぱり胸は痛むけど、多分後悔の気持ちはないと思う。


「ありがとう、大嶋。また明日ね」

胸の奥でズキズキと痛むのを隠すように、精一杯の笑顔でごまかした。


「宮西、頑張れよ」


私の背中に飛んできた大嶋の声が、ほんの少しだけ痛みを和らげてくれたおかげて、家につくまでの間は、涙はどうにかこらえることができた。

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